出来なかった動作を出来るように

病院に勤めていたころ、私は色んな仕事を経験しました。

 

実際に初めて勤めたのは栃木県で大学院に通いながら非常勤で働き始めた病院でした。

この病院は、一人勤めていた理学療法士が大学院の先輩で、とても成績の良い先輩だったので頼りにして就職を決めたのですが、卒業旅行でタイに1週間行って帰ってきたら、その先輩から「ごめんね、私3日後に退職するの」と、ショッキングな一言を告げられました。

 

そして、4月から私は不本意ながらたった一人の理学療法士として70人の患者様の状態を把握しながら、他に二人いたマッサージ師の方と身体的なリハビリをやっていくことになりました。

70人の患者様を3か月で全員、身体機能の評価で関節可動域(動かせる範囲)や筋力、日常生活の基本動作の能力をチェックして記録するということをしながら、日々の治療をしていました。

 

この時は非常に辛かったですが、徐々に楽しくなってきました。

それは、病室で看護師さんと一緒に患者様がどうすれば出来ない動作が出来るようになるかを話し合いながら改善する、病棟リハビリを始めた時でした。

同じ筋力でも、身体の使い方を変えれば、座れなかった人が座れるようになる、起き上がれなかった方が起き上がれるようになる、などの効果がみられると非常に楽しくなりました。

 

それからは、大変だったと思っていた仕事が楽しい要素が出来、やりがいのある仕事に感じるようになりました。

 

理学療法士の仕事というのは、単純に身体を柔らかくしたり筋力を上げたりすることではなく、実際の生活に役立つことが指導出来て初めて意味があるということを理解するのには十分な環境でした。

8割の方が80歳以上、9割の方が認知症があるような療養型と言われる病院でしたので、ほぼ全員の方が車いすで移動し、リハビリが無ければベッドで寝たきりの状態です。

このような患者様が、出来ないことが出来るようになる、というのは非常に大きな出来事です。

5年も入院したままで、ずっと動ける能力が変わらなかった方が動けるようになるというのは結構な事件で、一緒に見ている看護師さんも私より年齢も経験もずっと上でも一緒に感動して喜んでもらえるのが非常に嬉しかったです。

 

このような働き始めて最初の2年間の経験が、もしかしたら今の自分の考えのもとになっているのかもしれないと思います。

患者さんがどうしたら喜んでくれるのか、周りの人も感動して一緒に自分も喜べてやりがいを感じられる仕事は、何がキーになるのか、気づけるようになった2年間だったと思います。

実際、このような患者さんの出来ないことを出来るようにする病棟リハビリをするまではその病院をやめたいと毎日思いながら帰りの車を運転していました。

 

目の前の人が、出来なかったことが出来るようになる、それが理学療法の楽しいところです。

今も、出来なかったことを出来るようにするような、動作を変えるようなところを大切にしています。

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痛くて走れなかった人が走れるようになる、肘が痛くてボールが投げられなかったのが試合でも投げられるようになる、というような実際のスポーツ現場で役に立つような「結果」が出せると、喜んでもらえて自分も「ああ良かった」と満足できます。